3年B組 金理八先生 12013年05月01日

3年B組 金理八先生
第一話 〜はじまりは光〜


ここ、桜病院3Bを立て直すべく、坂本金理八が赴任してきた。

桜病院

前の教員が去ってから、1年のブランクが経っている。

一体、どんな生徒たちが待っているのだろう。
前任の教員から、ある程度のことを聞いてはいるが。

日本の病院とは全く異なる場所であることは間違いない。
覚悟を決めて、金理八は病院の門をくぐった。

しかし、教室に入った金理八が目にしたのは、これまで見たことのない光景だった。

3B

埃まみれの教室には、ゴミやカルテが散乱。医師や看護師たちからはクレームが。そして、授業中に当たり前のようにインスタントラーメンを食べている生徒たち。昼休みにパチンコに出かけたまま、帰ってこない生徒も。仕事をしているのは、一部の生徒だけであった。

「コラァ~ おまえら~」
そんな気持ちを抑えて、金理八は冷静に授業を始めた。

まずは、生徒たちに自分というものを知ってもらわなくては。

「はい、いいですか~。
君たちは今、何か困っていることはないかな?」

「仕事で使うソフトがダサいで~す」
太田光のような生徒(以下、光)が、ラーメンをすすりながら答えた。

「うん、そうか。今は、どんなものを使っているんだい。」

光は、キリバス人らしい人懐っこさて、丁寧に教えてくれた。

「よし、分かった。どーもありがとう。」


次の日、コンピューターに向かってプログラミングをしたり、命令を実行している金理八の姿があった。その片隅には、4年前の初代教員が残していってくれた資料が置かれていた。

そして赴任3日目。金理八は、授業に来るとこう言った。

「はーい、注目~。
今日は、先生が作った新しいシステムをみなさんにお見せします。」

最初に食いついてきたのは、光だった。
「先生、ちょっと使わせて。」

パソコンのことが少し分かる光は、使いながら操作方法を把握し、興奮がちに他の生徒達にも説明を始めた。

「先生、これ、今日から使えるの?」

「いや、まだまだ。
ほーら、みんな席について。」

金理八は、黒板に『ソフトウェア』と書き始めた。

「ソフトウェアの『ウェア』はだね、『物』という意味の他に、『器』という意味もあるんだ。
だから、食事を盛るのにちょうどいい大きさである必要があるし、毎日洗わなくてはいけない。
このソフトは、みんなが使うには、まだ少し小さい。
それに、君たちは、このソフトをメンテナンスできるかい?
だから、どんな機能が必要か先生にもっと教えて欲しい。
そして、先生がメンテナンスの仕方を教えてあげるから、それを学んで、君たち自身でメンテナンスできるようになって欲しいんだ。
いいかい。」

光「先生、僕にも教えてくれるの?」

「もちろん」

その日から、光への個別授業が始まった。

そして金理八は、このソフトが問題なく業務で使えるよう、さらに機能追加を行った。現在使っているデータも、新しいソフトに移した。

そして3ヶ月後、日本と同じ品質とサービスで、実運用をスタートさせたのだった。

生徒達は、お祝いのパーティーまで開いてくれ、この新しいソフトが使えることを喜んでくれた。

運用開始から半年経った現在も、日々、改良を加えながら、このシステムは活用されている。

こうして、金理八の3Bでの活動は始まったのであった。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
スパムコメント対策のため、お手数ですが、「キリバス」と入力をお願いします。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://fau.asablo.jp/blog/2013/05/01/6795479/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。